つい最近、飲みに行ったときの同席者が「缶詰が気になるんですわ。」とおっしゃっていたセリフだけをヒントに、フィクションを書いちゃいました。
本人が「書かない」って言ってたから、ネタいただきましたw
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僕は関西の港町に住む高校生。
今日は、ウチの父さんが、しきりに気にしていることについて、聞いて欲しい。
パインの缶詰のこと。
缶詰の話の前に、
僕の父さんのことをちょっと紹介する。
父さんの趣味は、マラソンだ。
「だった。」と言った方が良いのかも。
少し前は、僕も父と一緒に走ったりしたこともある。
父さんが「マイコース」と呼ぶルートは、海岸通りを進んで折り返してくるルート。折り返す場所は何パターンかあるみたい。
大会が近づいてくると、自宅からは、かなり離れたところにある空港まで行ってから、折り返しているみたい。あそこは電車やバスで行く場所だと思ってた。走って行くなんてすげぇな。
そんなルートでも、他にも走っている人もいるんだから「マイコース」って、自分だけのモノのように言うなんて、なんだか変だなぁ。なんて思う。
でも「マイコース」を語る時の父さんの顔は、なんか誇らしげな良い表情をしてる。母さんのことを話す時の表情とよく似ている。
そんな父さんも、
最近は、以前ほどは、走ってない。
毎日のように走ってたのがウソの様に。
しばらく目標となる大会がないコト、最近、仕事で昇進したコトなんかも影響があるのかもしれない。
今でもたまには、走りに行ってるんだけど、
走る格好で家を出ても、1時間もしないうちに帰ってくる。汗だくで帰ってくるのは、以前と変わらない。
そんなことよりも、父さんと僕との関係で、欠かせないのがポテチパーティーだ。パーティーって言っても、スナック菓子と炭酸飲料を2人でたらふく食べて飲むだけ。なんだけど、めっちゃ楽しいひとときなんだ。
僕のテストが終わった節目とかで開く、そんなパーティー。最近は、あんまし誘ってくれない。父さん体重が増えたのを気にしているのかな。
父さんと僕との関係はだいたいそんな感じ。
他にもあるんだけど、とりあえずそんなトコ。
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あっ、缶詰のことでしたね。
今の家に引っ越して1年くらいになる。
引っ越しのタイミングで新しく買いそろえたモノもあれば、前の家から持ってきたモノもある。
近距離の引っ越しだったから、どっちかというと、前の家から持って来たモノも多い。
そのうちの一つがパインの缶詰。
今日の主役。
たぶん、真ん中がくり抜かれたパイナップルの輪切りが10枚入ってるはず。缶の側面にはそう書いてある。
まだ中を開けて確認してないから、
10枚入ってる「はず」としかいえない。
この4月に始まった僕の残り2年半の高校生活も、きっとラベル通りの平凡な中味だろうな。なんて、諦めにも似た気持ちとともに、実際にフタを開けてみないと何が起こるわからん的な、野望と希望に満ちた未来への期待。
なんてことは、まったく考えていない。
話しは戻って。
缶詰っていうのは、元々長期間の保存を考えて作られたもので。
そのパインの缶詰のフタの上には、2022年2月の日付が印字されている。賞味期限なのか、消費期限なのかはわからないけど。製造日じゃないことは確か。
父さんは、印字されているずいぶん未来の日付の存在を知ってか知らずか、
「あの缶詰、早く開けて食べたいよなぁ」
「気になってしょうがないよなぁ」
「なんで開けねぇんだろな?」
なんて、僕に同意を求めてくる。
僕は「そうだね」と素っ気ない返事をしている。
覚えてるだけで3回くらい、そんなやりとりをした。
父さん、そんなにパイナップルが好きなのかな?
このパインの缶詰に込められた、母さんの想いを知ってるんだろうか。
僕は、まだ缶詰を開ける時期じゃないことを知っている。
詳しいことは、僕の口からじゃなく母さんの口から語るべきことだ。
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(続きそうで続かないw)